加世端池の大蛇
(知多市)
その昔、弘法大師が、佐布里に来られ、農民の貧しい生活ぶりを見られて、加世端の谷に堤を作って池を設ければ、その水によって、稲もよく出来て、生活も豊かになるであろうと奨められたそうだ。そこで、村中の者が協力して、池作りが始められ、幾年後か、付近に無いほどの立派な池が完成した。
この池を、加世端池と言い、満々と水をたたえ、どんな日照り続きでも、この水を利用して稲作が出来たという。
さて、この加世端池に、池の主として大蛇がいるということが語り継がれてきた。
ある日一人の男が、佐布里から草木へ行くために、追いはぎが出るとも言われる無気味な「滝の水」というところを急ぎ足で通って行った。ところが、道の真ん中に、大木が横たわっていたので、「よいしょ」とまたいだ途端、その大木が動き出して、するすると池の中へ姿を消して行った。
大蛇だったのだ。男はびっくり仰天して、一目散に家へ逃げ帰り、高熱を出して寝込んでしまったそうだ。
こうしたことがあって、加世端池の主は、大蛇であるということが語り継がれてきた。