弘法様の清水
(長野県王滝村)
むかし、むかし、夏の盛りに、一人のお坊さんが鞍馬峡の景色に見いっていました。そこへ、まぐさを背負った村人が汗水流して登ってきました。
お坊さんは、村人に、
「御岳山へ登る道がわからず困っていたところ。道を教えてもらえないか」と頼みました。親切な村人が、先にたって道案内をすると、お坊さんが尋ねました。
「こんな広い土地があるのに、なぜ田をつくらないのか。」
「昔から大分やってはみたが、どうにも水が引けません。惜しいことです。」と村人は答えました。
すると、お坊さんは
「それなら水を出してあげよう」と言って、持っていた錫杖を地面に突きたてました。
すると、どうしたことか、清水がどんどん湧き出してきました。
喜んだ村人は、お坊さんにお礼を言って別れました。
それからは村人そうでで田づくりに励みました。
この不思議な出来事に、村のひとたちは、
「あのお坊さんは、弘法様に相違ない」と話あい、清水を「弘法清水」と呼びました。