鈴のくれた水
(豊明市)
むかし、むかし、村ではもうふた月も雨がふりません。田の水もすっかりなくなって稲は枯れかかっています。困った村の人々が集まって八幡社で雨乞いをすることになりました。「どうぞ雨を降らせてください。」お供えものをして、火をどんどん燃やしました。その前で太鼓をたたき、笛をふいて、年寄りも若者も懸命においのりをしました。
雨乞いは昼夜を通して続けないとききめがないので、夜は若者たちが寝ないでおまいりをしました。
三日目の夜ともなると、若者たちもだんだん眠くなってきました。ひとりふたりといねむりがはじまり、最後までがんばって起きていたごさくも眠ってしまいました。
「これこれ、ごさく」声をかけられたごさくがハッと目を覚まして見上げると、髪も髭もまっ白な老人が、これもまっ白い大きな鳥に乗って見下ろしていました。
「ごさくよ、これに水を一杯汲んできてくれまいか。」
老人は杖についていた鈴をさし出しました。
「それは出来ません。どこにも水がないのです。」
「水はある。森を北へどんどん入っていくと、清水が湧いている。そこの水を汲んできてくれ。」
ごさくは、難儀をして、きれいな清水を鈴に汲んで、老人にさし出しました。
「ごくろう、ごくろう。願いはきっとかなえられよう。」言い残して、老人と白い鳥は空高く飛んでいきました。
「おい、不思議な夢を見たぞ。白い鳥に乗った老人が・・・」
「その夢なら、おれも見た。」「おれもだ。」「おれもだ。」
若者たちは、みんな同じ夢を見ていました。つぎの日の夕方、はげしい雨が降りました。